遺産分割協議には、相続人全員の承諾が必要です。
ただし、相続人の中に認知症などにより判断能力が不十分な方がいる場合や、未成年者が含まれている場合は、法律で定められた制度を利用して代理人を立てる必要があります。
詳しくは下記よりご確認ください。
1. 成年後見
遺産分割協議には、相続人全員の承諾が必要です。
しかし、相続人の中に認知症などにより判断能力が不十分な方がいる場合、遺産分割協議を進めることができなくなります。
このような場合は、成年後見制度を利用し、成年後見人を選任してもらう必要があります。
成年後見制度とは
知的障害、精神障害、認知症などで判断能力が十分でない方が不利益を被らないように、家庭裁判所に申し立てをして法律的に支援してくれる人を選任してもらう制度のことを「成年後見制度」といいます。
判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類の制度を利用できます。
家庭裁判所に選任された成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為を行ったり、本人の同意を得ないで行った不利益な法律行為を取り消したりすることにより、本人を保護・支援します。
なお、成年後見人等が選任された場合でも、スーパーでお肉やお魚を買ったり、お店で洋服や靴を買ったりするような日常生活に必要な範囲の行為は本人が自由に行うことができます。
申立に必要な書類と費用
成年後見制度を利用するには、本人の住所地の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
申し立ての必要な書類と費用はおよそ以下のとおりですが、事案によって多少異なります。
詳しくは管轄の家庭裁判所にお問い合わせください。
申立に必要な書類
-
申立書(家庭裁判所のサイトから様式をダウンロードできます)
-
本人の戸籍謄本、住民票又は戸籍の附票、登記されていないことの証明書、診断書
-
後見人等候補者の住民票又は戸籍の附票
-
親族関係図
-
本人の財産状況、収支予定表
-
後見人等候補者事情説明書
-
親族の意見書 など
申立に必要な費用
①収入印紙代3400円分(申立手数料800円+登記手数料2600円)
※補佐・補助申立で、代理権や同意権の付与申立もする場合はそれぞれ800円分の収入印紙が必要
②切手代
各裁判所によって異なりますが、およそ3,000~5,000円程度です。
③鑑定費用
成年後見制度を利用する場合は、本人の精神状況について鑑定が必要な場合があります。
鑑定費用の額は事案にもよりますが、およそ10万円~20万円程度です。
2. 特別代理人
相続人の中に未成年者がいる場合や、後見人と被後見人がいずれも相続人となる場合には、代理人を立てる必要があります。
相続人が未成年者である場合、通常であれば、未成年者の代理人は本人の父母がなることが一般的ですが、相続人の中に未成年者の父母が含まれている場合、父母は未成年者の代理人になることはできません。
未成年者および父母との間に相反する利益行為がある場合には、父母は代理人になることができなくなるのです。
この場合、親権者は子供のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。
特別代理人には、利害関係のない候補者を立てることが必要となりますが、一般的には利害関係の生じない親族や第三者などを候補者とします。
同様に、後見人と被相続人がいずれも相続人となる場合にも、利益が相反しない特別代理人を選任する必要があります。
特別代理人選任の申立に当たっては、家庭裁判所にて用意されている申立書に必要事項を記載し、以下の書類を添付して申請します。
家庭裁判所は申立てを受けると、申立て内容、候補者を判断するために書面にて照会することや、直接事情を確認することもあります。
必要書類
-
親権者(後見人)の戸籍謄本
-
未成年者相続人(被後見人)の戸籍謄本
-
特別代理人候補者の戸籍謄本
-
特別代理人候補者の住民票
-
遺産分割協議書(案)
※裁判所から依頼があった場合には、上記以外の書類を求められることがあります。